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第3話「仕事には、見えない作法がある」

事務長のつぶやき2026年10月05日 更新

事務長の今です!
事務長の今です!
仕事をしていると、「これは当たり前だ」と思っていることがあります。

例えば、誰かに声を掛けられたら相手の方を向いて返事をする。
上司や先輩から何かを頼まれたら、「承知しました」と返す。
外部の方と話すときには、相手や場面に応じて言葉を選ぶ。
メールや文書を書くときには、相手の立場を考えて言葉を整える。

どれも、特別難しいことではありません。

私自身、事務職として仕事を始めた頃から、言葉遣いや仕事上の所作について、誰かに一から教えてもらったという記憶は、あまりありません。

では、どうやって覚えてきたのか。

必要な場面に出会うたびに、自分で調べたり、本を読んだり、実際に接する取引先の方や内外部の方の話し方を参考にしたりしながら、少しずつ身につけてきたように思います。

電話の受け方や話し方。
相手への言葉の掛け方。
文章の書き方。
目上の方への接し方。
「この言い方の方が相手には失礼がないな」
「こういう場面では、この言葉を使うのか」

そんなことを一つひとつ覚えていきました。

特に、取引先の方と仕事をする中では、勉強させてもらうことも多かったように思います。
丁寧な言葉遣いをされる方、こちらの話をきちんと聞いてから答える方、難しい話でも相手に分かりやすく伝える方。
「仕事ができる人というのは、こういう話し方をするのだな」と感じることもありました。
そうした経験の積み重ねが、今の自分につながっているのだと思います。

私は事務長になって、前職時代を含めると17年余りになります。

それだけ長く事務長をしていると、今度は自分が職員に対して、仕事上の言葉遣いや所作について話す機会も増えてきました。

「上司に対しては、こういう言葉の方がいいですよ」
「外部の方には、この表現の方が丁寧ですよ」

そんなことを伝える立場になりました。

でも、そんな私自身が、いつも完璧にできているかというと、決してそうではありません。

電話の対応はどうだっただろうか。
部下への言葉の掛け方は適切だっただろうか。
忙しさに任せて、相手の話を十分に聞かずに返事をしていなかっただろうか。
時々、自分自身を振り返ることがあります。

そう考えると、仕事上のマナーや所作というのは、「できている人」と「できていない人」に分けるものではなく、私自身も含めて、仕事をする限り意識し続けるものなのかもしれません。

もちろん、時代が変われば、言葉遣いや職場の雰囲気も変わります。

職員同士で気軽に「了解です」と声を掛け合うこともありますし、それ自体が悪いことだとは思いません。

ただ、相手が上司なのか、同僚なのか、患者さんやご家族なのか、あるいは行政や他の医療機関の方なのか。
その場、その相手に応じて言葉や態度を選ぶことは、これからも大切にしてほしいと思っています。

特に、管理者や外部の方と接する機会の多い職員には、少しだけ意識してもらいたいことがあります。

言葉遣いや立ち居振る舞いは、単なる「礼儀」ではありません。
そこには、相手を尊重する気持ちが表れるからです。

そして、病院という組織では、一人の職員の対応が、そのまま「野宮病院の印象」になることもあります。
私自身、外部の方と接するときには、今でも言葉や対応には気を遣います。
医師や弁護士の先生方、行政の方、他の医療機関の方、取引先の方。

「この場では、どのような言葉がふさわしいだろう」と考えることは、今でもあります。
長年そうして仕事をしてきた私からすると、時々「そこは、もう少し丁寧にした方がいいのにな」と思うこともあります。

正直に言えば、「これは言われなくても分かってほしいな」と感じることもあります。

でも、最近は少し考え方が変わってきました。
自分にとっての「当たり前」が、誰かにとっての「当たり前」とは限らない。
そして、私自身も誰かから教えられたわけではなく、自分で学んできたのですから、今度は自分が伝える側になればいい。
そう思うようになりました。

先日も、ある職員に仕事上の言葉遣いや対応について話す機会がありました。

その職員は、「注意された」と受け取るのではなく、「勉強になります」と受け止めてくれました。
人は、いくつになっても学ぶことができます。
そして、私自身もまだまだ学ぶことがあります。

事務長になって17年余り。

以前は、自分が仕事をこなし、整えることに精一杯でした。
今は、自分が持っているものを、少しずつ次の人に渡していくことも、自分の仕事なのだと思っています。

挨拶をすること。
相手の顔を見て返事をすること。
言葉を選ぶこと。
相手の立場を考えること。

どれも小さなことです。

けれど、こうした小さなことの積み重ねが、職場の雰囲気をつくり、信頼をつくり、やがてその人自身の仕事ぶりにつながっていくのだと思います。

「そんな細かいことまで……」と思われるかもしれません。

私自身も、まだまだできていないことがあります。
だからこそ、職員に伝えるだけではなく、自分自身にも言い聞かせながら、これからも仕事をしていきたいと思います。

仕事には、数字や制度だけでは表せないものがあります。
その一つが、人と人との間にある、見えない作法なのかもしれません。

そして、いつか私がこの病院を離れるときに、
「今さんに、こんなことを教えてもらったな」

と、ほんの一つでも誰かの記憶に残っていれば、それで十分なのかもしれません。

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